モトーリモーダ A PIT AUTOBACS SHINONOME 探訪記(其の壱)
「モトーリモーダというお店の岡林さんという方が、清水さんにお店に来て欲しいんですって」
モトーリモーダのHPを覗いてみると、大人のためのモータースタイルを提案するお店であるという。ファッションにはとんと疎い私だが、その品揃えにはビビビと来た。われら中高年にとって懐かしくも胸キュンな、ちょっと古いレーシングブランドが数多く取り揃えられていたからだ。岡林さん(代表)に連絡を取ると、「ぜひA PIT AUTOBACS SHINONOMEにご来店ください!」とのことである。
オートバックス東雲(A PIT AUTOBACS SHINONOME)と言えば、首都圏のカーマニアにとってひとつの聖地。私が最大の聖地と崇める首都高辰巳PAにも近い。つまり、カーマニアでもビビらずに行ける。なにせカーマニアは、ファッション関係のお店に入ると、緊張で冷や汗が出てしまう。ユニクロですら冷や汗が出る。先日は初めてZARAなるお店に入り、緊張のあまり失神しそうになった。しかし、オートバックスなら大丈夫だ。なにしろ基本がカー用品店なのだから。
杉並区の自宅から、自分の庭とも言うべき首都高を走ってわずか40分。聖地に到着した。
階段を上がり、入り口を入ると、すぐ目の前にフェラーリとランボルギーニの公式ウェアがドンと陳列されていた。
実は私は以前より、A PIT AUTOBACS SHINONOMEの変身ぶりに感心していた。かつては、店内のほとんどがカー用品で埋め尽くされていたが、いつの間にかクルマに関わるファッション系の雑貨や書籍、あるいはステキな小物などのスペースが増えたからだ。
カーマニアも年を取ると、欲しいカー用品がなくなってくる。免許を取って40年以上、カー用品店に通い続けているので、もうあまり買うものがないのである。しかしファッション系のブツとはほとんど縁がない。なにせユニクロでも緊張してしまうのだから当然である。それをカー用品店内で物色できるとは、カーマニアにとっての大いなる福音ではなかろうか。
さっそく私は店内を探索することにした。フェラーリとランボルギーニの公式ウェアはスルーして、まず安そうな小物からだ。
一応私はフェラーリ(328GTS)とランボルギーニ(カウンタックアニバーサリー)のオーナーだが、クルマ以外の生活は「節約」を座右の銘としている。収入に限りのある庶民は、節約して夢のスーパーカーを買う以外に道がないのである。しかし100円ショップは大好きだし、小物なら許される。そのノリで店内を見回すと、まず目に入ったのは数多くのドライビンググローブであった。
実は私は最近、指が出るレトロなドライビンググローブがマイブームなのである。なぜなら、328もカウンタックもパワステがついていないからだ。328は赤いGTS(87年式)から黒いGTS(89年式)に買い替えた際、ぐっとステアリングが重くなった。フェラーリ328の後期型は、直進安定性確保のためアライメントが変更され、ステアリングが重くなっている(本当)。そこで私は、久しぶりにドライビンググローブの購入を迫られた。決してファッションではなく、必要に駆られてやむなくであった。
続いてカウンタックアニバーサリーも買った。コイツはまさに世界中の乗用車の中で一番ハンドルが重いんじゃないかと思うほど重い。我が家の車庫入れは世界一の難度を誇るため、手が滑ったらどうにもならない。そういった事情により、ついドライビンググローブに目が行ったのだ。しかし、こちらのドライビンググローブは、どれもいかにも高そうな本革製。「高そう」というだけで私は回れ右をした。
すると反対側には、レーシングブランドの靴下が多数陳列してあった。マルティニカラーやアルファロメオだけでなく、スバリストが泣いて喜びそうな「555」カラーもある。値札を見ると1500円前後。スバラシイ!
カーマニアがさりげなく、好みのレーシングブランドの靴下を履く。それは実に奥ゆかしく、適度にオシャレさんではなかろうか。靴下なら目立たないので、「オタクくさい」と後ろ指刺されることもない。それでいて、十分な自己満足に浸れるのである。(つづく)
清水草一プロフィール
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。代表作『そのフェラーリください!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高はなぜ渋滞するのか!?』などの著作で道路交通ジャーナリストとして活動。
今回、清水さんが探訪されたお店はこちら
A PIT AUTOBACS SHINONOMEは「クルマもヒトもピットイン」をコンセプトにオープンした、オートバックスの新たなフラッグシップ店。クルマに関わる安心・安全はもちろん、クルマと共に過ごす居心地の良い空間を演出。クルマに関するあらゆるコトが新たに発見・体験できる売場では、クルマ好きにはもっとワクワクする楽しさを提供するとともに、BOOK&CAFEスタイルを導入することで、同乗する家族や友人といった幅広い世代の方々が一緒に楽しめる店舗を目指します。