2023の春夏新作モデルとして、フランスのクラシック・レジェンド・モータースと、ベルギー人レーサー、ジャッキー・イクスによるコラボレーションが発表されました。同社では「ル・マン24時間レース」「スティーブ・マックィーン(栄光のル・マン)」に続く、コラボレーション企画となります。
6度のル・マン制覇を成し遂げた"キング"
F1を皮切りに、あらゆるレースに参戦していた彼が特に強さを発揮したカテゴリーこそ、ル・マン24時間の耐久レースでした。フォーミュラと二足の草鞋を履く形でスタートしたル・マンへの参戦は、F1に対する思いが消極的になり始めた1970年代後半から本格化。ガルフカラーのフォード GT40や、ポルシェ936、ポルシェ956などを操り、6度の優勝に貢献しました。
マツダ 787Bのル・マン初制覇の際には、チームのスーパーバイザーとして招聘され、トップを走行するメルセデスの牙城を崩すべく、ペースアップを指示したことで、メルセデスをトラブルに追い込んだ的確なレースマネージメントは有名な話。彼の存在なくしては、マツダによる日本車初制覇も成し遂げられなかったといっても過言ではありません。
バブル期にはダンロップのCMに出演やイベントで来日するなど、日本との所縁が多いイクスも御年78歳。F1でのワールドチャンピオン獲得は惜しくも達成出来ませんでしたが、ジャッキー・スチュワートやエマーソン・フィッティパルディ、クレイ・レガツォーニらと同じ70年代を闘ってきた伝説のドライバーとして挙げられる一人であることに変わりはありません。
インナーに秘められた想い
今回のコラボレーションでは、彼が現役時代に長らく愛用していたヘルメットカラーを基調とした深みのあるネイビーやホワイトのラインを基調としたデザインが印象的。レザージャケットの他に、ウィークエンドレザーバッグ(2サイズ)、レザーウォレットがラインナップ。ヘルメットの形が加えられたシグネチャーはオリジナルの証。さらにレザージャケットのインナーには、1969年のワンシーンがプリント。これは、当時のル・マン式スタートに反対していたジャッキー・イクスが中指の代わりに、舌ベロを立ててアピールしているようにも捉えられます。このレースで、コースをゆっくりと歩いて渡り、全車がいなくなったことを確認したの後にスタートを切ったイクスを尻目に、コース上ではクラッシュや死亡事故が発生。一方のイクスは最終的に僅差で勝利を収めるという栄誉を成し遂げたことで、自身の意見が受け入れられ、翌年からローリングスタートに変更されたという歴史の一幕がこの写真1枚に込められています。