海外バイクアパレルが好きな方であれば、一度くらい「CE規格」や「CE認証」といった言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。でも実際、それが何を意味するのか正しく理解している方は少ないと思います。
そこで今回、当社で扱っている商品とも関連深いこの「CE」という制度について徹底解説しますので、より安全にバイクを楽しむための用品選びに役立てていただければと思います。
■ セクション1_ CEについて
まず、欧州で流通・販売されるバイク用品には「CEマーキング制度」に基づいて、「CEマーク」の表示が義務付けられています。そしてこのCEマークの表示するためにはEU域内で統一された厳格なルールや基準をクリアする必要があります。仮に、CEマークのない製品が流通・販売されると製造者が厳しく罰せられます。CEマークとは、その製品が該当する欧州整合法令をクリアした証なのです。

■ セクション2_ CEマーキング制度とは
CEマーキングの制度は、それまでEU域内でバラバラだったルールや基準を統一し、流通を円滑化させる目的で1993年にスタートしました(93/68/EEC)。”CE”はフランス語の「 Conformité Européene 」の頭文字であり、直訳すると”欧州適合性”となります。
この制度の対象はあらゆる分野におよび、加工機械や玩具、家電製品など多岐に渡ります。
当初、バイクウェアはPPE(個人用保護具)として、1994年に制定された「EN 13595(整合規格)」に基づき職業ドライバーへ向けた製品のみが制度の対象となっていました。つまり一般的なユーザーが使用するバイクウェアはこの制度の対象外だったわけです。
これが2018年4月21日、新しい法律(PPE規則2016/425)の施行により、一般ユーザーに向けた製品もPPE(個人用保護具)の対象となり、新規格「EN 17092(整合規格)」に基づいたCEマークの表示が義務付けられることになりました。
■ セクション3_ CEマークとEN規格
CEマークを表示するためにクリアしなければならない基準の一つに、「EN規格(整合規格)」があります。
”EN”はEuropean Normの頭文字であり、European Standardsとも呼ばれるEU域内における統一規格による安全基準(日本でいうJIS規格のようなもの)のことです。
このEN規格こそがバイク用品において、その安全性を明確化する重要な規準となります。
下記はバイク用として製造される主なカテゴリーのEN規格の一覧です。
EN規格 | アイテム |
---|---|
-EN 1621 - 1:2012 | 部分プロテクター |
-EN 1621 - 2:2014 | バックプロテクター |
-EN 1621 - 3:2018 | 胸部プロテクター |
-EN 19038 :2010 | ゴーグル |
-EN 13634 :2017 | シューズ |
-EN 13594 :2015 | グローブ |
-EN 13595 | プロ向けのバイクウェア |
-EN 17092 | 一般向けのバイクウェア |
この中でもとりわけ重要な「プロテクター」、「一般向けのバイクウェア」、「グローブ」、「シューズ(ブーツ)」について解説します。
- プロテクターのEN規格(EN 1621)
EN 1621に区分されるバイク用プロテクターはその種類と性能によってさらに細分化されます。
プロテクターの役割は「どれだけダメージを小さくできるか(吸収できるか)」ですが、その度合いを「レベル表記」で表します。約2.5㎏のストライカ(重り)を2mの高さから落下させ、プロテクターを通して身体に伝わる力「kN(キロニュートン)」を計測します。プロテクターごとに上限が定められ、レベル1とレベル2に分類されます。レベル2はレベル1に比べて身体に伝わる力は小さくなり、防御力はレベル1<レベル2となります。
以下はプロテクターの種類と種類ごとの基準値です。
▼部分プロテクター(EN 1621 -1:2012)
レベル1:平均35kN、最大50kNを超えてはならない
レベル2:平均20kN、最大35kNを超えてはならない
対応箇所によりアルファベットで識別。
├ S –肩
├ E –肘
├ H –ヒップ
├ K –膝
├ K+L –膝と脛
└ KP –ナックル プロテクション
▼バックプロテクター(EN 1621 -2:2014)
レベル1:平均18kN、最大24kNを超えてはならない
レベル2:平均9kN、最大12kNを超えてはならない
代表的な保護範囲に下記の3種類があります
├ FB -フルバック(背中全体)
├ CB -センターバック(背中中央)
└ LB -ロワーバック(背中下部)
▼胸部プロテクター(EN 1621 -3:2018)
レベル1:平均30kN、最大45kNを超えてはならない
レベル2:平均20kN、最大35kNを超えてはならない
各プロテクター共通の項目ととして下記の表示があります。
T+ ・・・40度以上(高温)でも性能を発揮
T- ・・・-10度以下(低温)でも性能を発揮
また、プロテクターの保護範囲に応じて下記の2タイプがあります。
TYPE A ・・・限定的(専門的)な保護範囲
TYPE B-・・・通常の保護範囲

- ウェアのEN規格(EN 17092)
バイク用ウェアに関しては前途した通り、職業ドライバーへ向けた製品に対して「EN 13595」が適用されていましたが、一般的なライダー向けの製品についても2018年に施工されたPPE規則((EU) 2016/425)によりその対象となりました。この時、制定された新規格「EN 17092」は安全性をAAA、AA、A、B、Cの5つのクラスに区分し明確化しています。これにより製品のプロテクション能力がユーザーにとって判別しやすくなりました。



- グローブのEN規格(EN 13594)

- シューズ(EN 13634) -
バイク用のシューズは4つの項目において、それぞれ「レベル1」と「レベル2」に分類されます。下記の画像を例に説明すると、左側のシューズはショート丈なので「種類においてレベル1」、右側のシューズはロング丈なので「種類においてレベル2」となります。これはあくまで種類におけるレベル判定ですので、そのほかの項目はそれぞれの項目ごとの基準でレベルが判定されます。


- シューズにおける4つの安全基準 -

▼シューズの種類
- レベル1:ショート丈
- レベル2:ロング丈
▼耐摩耗性
研磨ベルトが回転する特殊な装置で生地の摩耗テストをします。
- レベル1:エリアAで1.5秒、エリアBで5秒
- レベル2:エリアAで2.5秒、エリアBで12秒
▼防刃性
ブレード(ナイフ)一定の高さから落下させ、それぞれのエリアで貫通する距離を試験します。
- レベル1:エリアAで2.0m/s時25mm以下、エリアBで2.8m/s時25mm以下
- レベル2:エリアAで2.0m/s時25mm以下、エリアBで2.8m/s時15mm以下
▼横方向の剛性
シューズを倒して上下から力を加え、一定の基準値に達するまでの力を測定します。
- レベル1:1.0kN~1.4kN
- レベル2:1.5kN~
欧州で販売されるバイク用品は、厳格な安全基準に基づき管理されています。CEマークのついたバイク用品を身につけることは、安全性が確認された装備を選ぶことを意味します。特に安全を重視する方は、レベルAAAのウェアにレベル2のグローブやプロテクターを組み合わせるのがおすすめです。一方、街乗りがメインなら、快適性を優先し、クラスAやAAのウェアにレベル1のグローブやプロテクターを選ぶのも良いでしょう。重要なのは、自分の用途に合わせて適切な装備を選ぶ知識を持つことです。
バイク文化の成熟した欧州では、安全基準の整備も進んでおり、フランスではCEマークのないグローブでの運転すら禁止されています。一方、日本ではヘルメット以外の装備に法的な安全基準がなく、メーカーが「バイク用」と称せば販売が可能です。
バイクは自由を楽しむ乗り物ですが、リスクと隣り合わせでもあります。自己責任で済ませるのではなく、適切な装備を身につけ、安全にバイクライフを楽しみましょう。